ハッセルブラッド スペシャルコンテンツ

2025.12.25

X2D IIとX2Dは描写が違うのか。噂を徹底検証!(前編)

Hasselbladオーナーの皆さま、いつもお世話になっております。また、Hasselbladにご興味ご関心をお持ちの皆さま、はじめまして。

 

Hasselblad総代理店を務める株式会社セキドにて、Hasselblad technical salesを担当している、k.kurokawaこと黒川です。名前の通り技術営業を担当していますが、皆様の身近なところでは、Hasselblad総代理店 X(旧Twitter)アカウントの運営や、各代理店で開催しているイベントでのトークショーなども担当しています。

 

特に、Xの発信では作例も担当していますので、ぜひ見ていただければ幸いです。また、フォローしていただけると、とても励みになります。

 

Hasselblad_sekido_X

 

 

きっかけはとある噂

 

先述の通り、日頃よりXなど様々なSNSから情報収集を行っていますが、Hasselblad関連でこんな発信を見かけました。

 

「X2D II 100Cになってから、描写が変わった。」

「X2D II 100Cを購入したけれど、X2D 100Cの方が好みの描写だったかもしれない」

 

X2D II 100Cは、2025年8月26日に発売された最新機種で、2022年に発売されたX2D 100Cシリーズの2世代目となる製品です。最新機種だけにアップグレードされた機能や改善点は多く、また、前モデルと比べて10万円近く価格が抑えられていたこともあり、多くの方が新規購入や買い替えを行われた話題の1台です。

センサーも新しくなり、ダイナミックレンジも広くなったのですが、基本的な色の表現の方向性は変わっておらず、その点に関しては両機種とも同様の描写が出る1億画素の中判ミラーレスとして知られています。

 

発売以来そういった認識だったのですが、先ほどの発信を見て、本当に描写が変わったのかどうかが気になりました。

 

 

屋外撮影で2台を検証

 

そこで今回、Xにて作例をご協力いただいている y.oku さんにも協力してもらい、旅行に両機種を持ち出して、同じ場所・同じ設定で撮る比較テストを行ってみました。

 

 

 

同じ設定にマニュアルで設定し、左がX2D、右がX2D IIです。

 

 

なんということでしょう。厳密には全く同じ環境とは言えないものの、同じように撮影してみたところ、異なる2枚が撮影できました。確かに、色の濃度の違いや色の出方に差があり、X2Dのほうは少し色がかぶっているように見えます。

 

現場ではカメラのモニターで確認していたため、より違って見えました。カメラは使用されているセンサーや映像処理によって描写が変わることがあり、個々の好みもあって必ずしも「最新機種が最も良いカメラ」と言い切れるものではありません。

 

もしかすると、X2Dの趣ある描写はX2D IIでは再現できないのかもしれません。単に「好みの描写のカメラを買ってください」と結論付けることもできますが、私としてはHasselbladオーナーの皆さまにとって、より良い機材選びにつながる情報を発信することこそが、総代理店としての大切な役割だと考えています。

 

「いったい何が違うのか」を明確にするため、もう少し踏み込んで検証してみたいと思います。

 

 

X2D IIとX2Dを比較

 

今回は「色に関連する描写」のみに絞って比較しました。

 

ボディ内手振れ補正やジョイスティックの追加など、その他の機能を考えればX2D IIの方が優れていると断言できるでしょう。それでも、好みの描写のためであれば、「使いづらささえも愛せる」という方がいらっしゃるのも事実です。使用シーンの中で違いが感じられるシチュエーションを考えたとき、ISO感度や周辺減光による影響も想定できたため、あわせて検証してみます。

 

比較環境は次の通り。

 

使用被写体 :カラーチャート Calibrate colorchecker CLASSIC(CCC)

ライティング:撮影用 面発光LEDライト 1灯

室内環境  :真っ暗な部屋の中で上記LEDライトのみ使用

機材設定  :露出をMモードに設定し、X2Dを基準に調整。ホワイトバランスもマニュアルで設定

※ISO64をX2DIIで指定できないため、この時だけISOオートに設定して同じ設定になるように調整

 

 

 

比較-1 90mm使用の物撮り

 

まずは、素直な描写が出るXCD 2,5/90Vを使用し、CCCをシンプルに撮影してみます。

 

考えにくいとは思いますが、万が一のレンズの個体差による描写の違いを除外するため、カメラ2台に対しレンズ1本を付け替えてテストを行いました。90mmは周辺減光が若干発生するため、あえて中央のみに写るよう調整して検証しました。

 

 

 

 

ここではISO感度のみを変更しながら検証してみました。ISO100やISO1600といった、普段使用しやすい設定ではCCCの各色に大きな違いは見られません。X2Dの方がやや暗く、わずかに寒色よりに写って見えるくらいでしょうか。

 

改めて比べてみることで、いかにX2D IIが高感度でも画質を保てていることを再確認できました。ノイズの量は同じように見えましたが、色の正確性は明らかにX2D IIの方が優れていることが分かります。

 

 

比較-2 25mm使用の物撮り

 

次は、周辺減光の影響をわかりやすくするため、XCD 2,5/25Vを使用し、最短撮影距離でF値を変更しながら撮影して比較します。今回もレンズは1本のみ使用です。

 

 

 

 

X2D IIとX2Dの描写に、はっきりと差が表れました。

 

 

周辺部を見てみると、X2Dのほうがやや暗く、色もこってりしたように見えます。X2D IIはある程度はっきりと写っているように見えます。

 

中央部を比較してみましょう。

 

 

ここでは、あまり大きな差が見られませんでした。全体で見ると暗く感じられたものの、拡大した中央部のみを比較すると、描写に大きな違いはないと言えるでしょう。

 

この結果から想定できることは、「X2D IIとX2Dの描写の差が、周辺減光の自動補正の有無によって発生している可能性が高い」という点です。

 

 

メーカーへ確認

 

メーカーへこれらの検証結果を共有し、確認したところ、次のような回答をいただきました。

 

「X2D IIから、より良い撮影体験のため「補正データを画像データに埋め込む」が追加されました。これにより、Hasselbladの現像ソフトPhocusおよびPhocus Mobile 2にて、瞬時に画像補正が行えるように改良されました。

 

この時、ボディ内でRAWをJPEGデータに変更して内部保存する際にも補正データが自動的に適用されて、周辺減光などを始めとしたレンズによる描写影響を改善してくれます。X2Dではこの機能がないため、ボディ内で確認した時や、外部モニターでJPEGやHEIFデータを比較したときに、描写に差が生じることがあります。また、X2D IIはX2Dと比べて、より自然な発色になるように改良されています。」

 

 

結論

 

JPEGやHEIF形式で撮影を楽しまれている方の中には、「描写が違う」と感じられる方もいらっしゃると思います。その発生要因は、X2D IIから追加されたレンズ補正の自動適用によるもの。つまり、X2D IIとX2Dでは本当に描写表現が変わったわけではないようです。

 

……しかし本当にそれだけでしょうか。この結論が正しいとするなら、適用前の画像データ、すなわち外部ソフトでRAWデータをそのまま展開して出力しただけでは、補正データが適用されず、差は生まれないのではないでしょうか。

 

また、好評のX2D IIの新機能「HNCS HDR」によって出力されたHDRのJPEGやHEIFデータにおいても、同じ要因で差が確認できるのでしょうか。日頃からHDR機能をONにして撮影されている場合、描写に差を感じた時の2枚は実はX2DのSDR画像とX2D IIのHDR画像であったかもしれません。

 

X2D IIとX2Dで比較し、「やっぱりX2Dの描写が良かった」と感じた方がいらっしゃるとすれば、次に考えることは「X2D IIでX2Dの描写を出したい」ということでしょう。さらに詳しく調べ、なぜそのようになるのかを分析する必要がありそうです。

 

ー後編に続く