ハッセルブラッド スペシャルコンテンツ

2026.01.23

X2D IIとX2Dは描写が違うのか。噂を徹底検証!(後編)

2026年になりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

セキド Hasselblad technical salesの黒川です。前編に続き、X2D IIとX2Dの比較についてご紹介します。前編では、X2D IIとX2Dの写りが違って見えるという噂から始まり、検証結果からJPEGやHEIFデータでの記録では「周辺減光の自動補正」などの影響により、多少違いが発生するということが分かりました。

 

しかし、前編での結論でも述べた通り、自動補正が適応される前のデータ(例えばRAWデータをそのまま展開した状態)やX2D IIの新機能である「HNCS HDR」をオンにした状態にも違いが発生するかなど、まだまだ深く検証することが多いと感じました。

 

今回の検証は「X2D の描写のほうが好みだ」と感じている方がいらっしゃることが前提となっているため、究極的にはX2D IIでX2Dの描写が出せるか否かがポイントとなります。果たして、どのような結果となったのか。簡単な分析ではありますが、一つの回答としてご覧いただければ幸いです。

 

なお、今回の内容は前編を前提に進んでいきます。まだご覧になっていない方は、先に前編をお読みください。

 

 

X2D IIとX2Dはどんな差があるのか

 

2機種の描写には周辺減光による違いが見られることを前編でまとめましたが、それぞれの発色にはどのような違いがあるのでしょうか。

 

前編でご紹介したJPEGの比較画像から、Hasselbladの純正現像ソフトPhocusを用いて、カラーチャートのそれぞれのパネルの一部分から色データ(RGB値)を抜き出し、さらにPowerPointを用いて色データと同じ色をしたオブジェクトを再配置することで比較しました。

 

 

 

比較A:25mmで撮影した画像

 

まずは最も異なる描写となった、25Vを使用して絞り開放で撮影した時の画像を比較してみます。

 

 

18色のカラーパネルのうち、周辺に配置された14枚に大きな違いが見られます。これは、X2D IIでは周辺減光が自動補正されている一方、X2Dでは適応されていないためです。

 

 

わかりやすく並べ替えてみました。左側が最も外側、右側が中央の色です。こうして比較すると、中央部はあまり差は見られないのに対し、周辺では大きな違いが見られます。周辺減光補正の有無の影響は大きいようです。

 

 

 

では、今度はRAWデータで撮った全く同じカットを、Phocusでレンズ補正(周辺減光)のみ適用して現像し、JPEGで出力したものを比較してみます。

 

 

差が大幅に改善しました。結構近い色になったと思います。

 

 

先程同様、一部の色を並べて比較してみました。細かく見ていくと、X2D IIのほうでは青や緑、オレンジ系の色の発色が明るく、よりニュートラルになるよう改善されたように見えます。

 

 

 

一方で、X2Dは色がこってりする傾向が読み取れます。X2Dの写真で評価される独特な雰囲気のある写りの理由は、こういった部分が関係しているのかもしれません。

 

 

次に、RAWデータの状態で比較してみます。Phocusにインポートした後、全ての調整項目のチェックを外し、素の状態の画像で比較を行いました。JPEG比較時と変わらないところから色を抜き出して、並べ替えたものがこちらです。

 

 

レンズ補正がどちらにも適応されていないため、そこまで大きな差はないように思います。

 

しかし、レンズ補正を適応したJPEGデータの比較時と同じように、X2D IIは発色が良く、X2Dでは鈍い色が所々確認できます。RAWの時点でも、若干の違いが見られるようです。

 

 

 

比較B:90mmで撮影した画像

 

周辺減光の影響も少なく、ほぼ順光でライティングした90Vでの比較画像も、同じように試してみます。まずはJPEGから確認します。

 

 

周辺減光の影響をほとんど受けていないためか、25Vで撮影したデータより差が確認できません。好条件で撮影すれば、ほぼ同一の描写とも言えそうです。

 

 

こちらも同様に並び替えて比較します。こうして見比べると、若干ではありますが同じく赤やオレンジ、青の発色がやや明るく、はっきり写っているように見えます。

 

 

なお、両画像に周辺減光補正を行ったJPEGでもほぼ結果が変わらなかったため、省略します。

 

 

続いて、RAWデータのままでの比較を行います。

 

もちろん、レンズ補正関連は全て適用していない素の状態で比較していますが、ほぼ違いがないと言える結果です。

 

 

しかし、並び替えて比較してみると、わずかながら違いが確認できます。全体的にX2D IIのほうがX2Dよりも発色がよく、はっきりとした色が出ています。反対に、X2Dではどの色もやや鈍く、やや暗い発色に見えます。発色の差の大きさは、色によって多少違いが見られます。

 

 

 

撮影条件および撮影の設定も全て同じ条件で比較し、一切調整を行っていないRAWデータの状態でも、このような違いがあると発見した時は驚きました。では、この違いはどこから生じているのでしょうか。

 

 

改めてメーカーに確認

 

これらの検証結果を改めてメーカーに報告し、なぜ違いが生じるのかについて確認したところ、以下の回答がありました。

 

「Hasselbladでは、独自のカラーシステムであるHNCSを継続的に改善しています。そのため、時期や機種の違いによって、わずかな差異が生じる場合があります。今回比較したX2D II 100CとX2D 100Cの間では基準色から調整を行っており、主に従来の色彩基準をベースに微調整を実施することで、緑や肌の質感などの色再現が、より実物に近づくよう改善しています」

 

この回答から、X2D IIはX2Dに比べて、撮影したときの描写がよりリアルで自然な色彩表現に近づくよう、RAWデータから調整が行われていること、JPEGデータ(HNCS適用後)においても色彩表現が改善されていることが分かりました。HasselbladはカラーシステムHNCSだけでなく、色再現の根本的な部分から目指すべき最高の色彩表現に向けて進化し続けていることが分かり、嬉しく思いました。

 

また、今後の機種開発はX2D II 100Cの色再現コンセプトを基盤に進められる予定とのことです。 このことから、X2Dの描写は今後発売されるカメラにおいて完全に同一の形で再現されるものではなく、X2D固有の色表現になると個人的に解釈しています。

 

 

続いてX2D IIのHDR機能についてですが、今回は比較を見送ることとしました。
本機能は、カメラ内でHDRを設定して撮影する際、HDR写真に最適な露出へ自動的に調整するため、「スマート測光」が適用されます。
今回の検証において、このスマート測光は、通常撮影時に最も測光範囲が広い「中央重点測光」とは異なる測光方式であることが確認できました。
そのため、撮影条件を正確に揃えたうえでの比較が困難であると判断し、本検証からは除外しています。

 

このスマート測光についてですが、測光範囲としては中央重点測光と同様に撮影範囲全体をカバーしていると回答がありました。違いとしては高度なシーン判別を備えており、ハイライトの圧縮アルゴリズムを用いることでより多くのハイライト情報を保持し、ダイナミックレンジをさらに拡張させてHDR画像に最適なデータを作成できる高機能性を持っております。

 

例えば、青空が写るシーンなどでは本来ならば白飛びしたり青が白っぽくなってしまうところが、実際に見た青空の美しさを再現するかのようにHDR写真を撮影することができるのです。もちろんこの機能はX2Dにございません。X2D IIを使用していてX2Dと比べて写りが変わったように感じる方は、あえてHDR機能をオフにして撮影することで、好みの色に近づくかもしれません。

 

 

結論|RAWデータから若干の差がある

 

今回の比較検証で判明したことは、次の通り。

 

JPEGで撮影したデータを比較した時

 

X2D II:全体的に偏りのないニュートラルな発色
    周辺減光は撮影後に自動的に補正される

 

上記の通り、見ている世界をそのまま写し取るような、空気感と透明感を両立させた映像美のある美しい写真に仕上がります。さらに、HDR使用時には輝度表現が加わることで、立体感や奥行きのある描写が得られます。

 

X2D :暗部のみトーンがやや鈍く、少しベタ塗りのように見える
    周辺減光がそのまま反映され、雰囲気のある写りになる
    条件によっては、緑が被ったような写りになる

 

これらの要素が重なることで、中央部ははっきりと解像した透明感のある描写となり、周辺部は暗くなるため、色が少しベタ塗りのようになり、独特の雰囲気が演出された写真芸術らしい印象的な写真に仕上がると考えられます。

 

 

ただし、ライティングなどで光の条件を統一し、適切なレンズ補正を入れたり、周辺減光が発生しにくいレンズを使用した場合には、X2D IIとX2Dの両機種でほぼ同じような色が出るようです。これはHNCSによる色の統一性の効果が十分に発揮されている結果です。

 

 

RAWで撮影したデータを比較した時

 

X2D II:発色がより鮮やかになり、暗い色から明るい色までをバランス良く記録できる

 

X2D :暗めの色については、X2D IIよりも発色が鈍くなりやすいように見える

 

ただし、90Vで撮影した検証結果から読み取れるように、しっかりと光を当てて周辺減光なども発生させないようなレンズで撮影すれば、色のクセや一部の色の発色が鈍くなる現象をある程度抑えられるようです。

 

メーカーから得られた回答にもあるように、X2D IIとX2DではRAWデータの段階から差があります。そのため、X2Dの描写が好きな方にとって、X2D IIを何らかの形で工夫してX2Dと同じ描写を出すことは、とても難易度が高いと考えられます。

 

もしX2D IIを使用しながらX2Dの描写を楽しみたい場合は、X2Dの色の描写傾向をしっかりと分析し、外部画像編集ソフトであらかじめプリセットを組んで、似た色に仕上げられるように調整する方法がよいかと思います。

 

なお、X2D IIでは現在、色に関する調整項目はホワイトバランス設定に限られており、色温度やティント(緑〜赤の色味調整)を変更すると、強制的にマニュアルホワイトバランスに変更されます。仮に今後のファームアップデートによって、レンズ自動補正のオン/オフ切り替えが可能となり、さらにオートホワイトバランス使用時でもA(アンバー)、B(ブルー)、G(グリーン)、M(マゼンタ)の微調整を維持したまま撮影ができるようになれば、疑似的にX2Dの描写を再現させて楽しむことができるかもしれません。

 

X2D IIは2025年8月26日の発売以降、幾度も大型アップデートが行われ、設定メニューのデザインや新機能の追加、細かな改善が継続的に行われてきました。今後の発展に期待しつつ、X2D IIを使用していくのが良いのではないかと私は思っています。

 

 

前編・後編に分け、総文字数7,000字を超えた今回のコンテンツはいかがでしたでしょうか。今後もこのような検証系・レビュー系のコンテンツをお届けしたいと考えておりますので、ぜひ楽しみにしていただければ幸いです。

 

別件ではございますが、今年もCP+2026に出展いたします。私自身も全日スタッフとして対応する予定です。Hasselblad総代理店として、Hasselbladの魅力をより多くの方にお伝えできるよう、引き続きさまざまな取り組みを行ってまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

最後になりますが、結論はX2D IIとX2Dは似て非なる描写特性を持つカメラであり、それぞれの描写に強くこだわりがあれば、その機種を使用していただくのが最良の判断、という結果になりました。優劣をつけるものではなく、どちらも大変素晴らしいカメラです。本コンテンツがHasselbladに興味を持っていただくきっかけや、どちらの機種を選ぶか迷われている方の後押しとなれば幸いです。

ご覧いただき、ありがとうございました。よろしければ、今回のコンテンツのご感想をX(旧 Twitter)などでURL付きで発信いただけたらとても嬉しいです。今後のコンテンツ制作の励みになります。